第5話|サンエナジー(専門版)

連載小説2026.02.25

社内の進捗会議が始まった。

画面には十人強参加している。
だが、実際に会ったことのある人間はほとんどいない。
「では、始めます。」課長の高岡が淡々と進行する。

「福岡の案件は、西島が担当しています。」

画面が切り替わり、工程表が共有された。
横軸に時間、縦軸に工事の工程が書かれており、矢印で進捗を示している。

「今週中に杭打ちまで終わる予定です。EPCは桐生さんのところです。」

その名前が出た瞬間、誰かが口を挟むことはなかった。
EPCはサンエナジーと取引が多いネクサス工建。その担当が桐生だ。
ネクサス工建は業界ではそこそこ名が知られた会社だ。
サンエナジーとの付き合いも長い。

「問題なさそうですね。」
部長の合川が、短くそう言った。それで話は一区切りになる。

山口が補足するように続けた。
「着手金も予定どおり入金されています。」
数字と事実だけが並ぶ。会議は終始、穏やかだった。

不安を口にする者はいない。
逆に言えば、誰も強い関心を持っていないとも言えた。

「では、西島さん。」高岡が俺の名前を呼ぶ。
「来週、福岡の現地確認をお願いします。」

「了解です。」
そう答えながら、俺は少しだけ気が緩んだ。
現地確認。久しぶりの出張。

出張でいろいろなところに行けるのは楽しみだ。
俺が転職先に対象校発電事業者のサンエナジーを選んだ理由の一つでもある。

「何かあれば、随時共有してください。」

高岡の言葉を最後に会議は終わった。
画面が次々と消えていく。
静かになった部屋で俺は椅子にもたれた。

福岡か。
現地確認のスケジュールを頭の中で整理する。
午前中に移動、午後はEPCと発電所現地確認。

……夜は空くな。

博多ラーメン。どこに行こうか。
早速、スマホでラーメン屋を調べている自分に少しだけ苦笑した。

工場にいた頃は出張といえばトラブル対応か怒られるための呼び出しばかりだった。
それに比べれば今の仕事はずいぶん穏やかだ。

工程表は予定どおり進み、資金も問題ない。施工会社も信頼できる。
太陽光発電事業という仕事はこうして淡々と進んでいくものなのだろう。
少なくともこの時の俺はそう思っていた。

画面の片隅に残った工程表を閉じ、ノートパソコンをそっと閉じる。
問題はなさそうだ。
そう判断した、その瞬間こそが無防備だったのかもしれない。


【工程表|MEMO】
建設工事では、工事内容と順序を一覧にした工程表が作成される。
予定と実績が矢印で表記され、進捗通り進んでいるかを確認する。
太陽光発電所の工事では、一般的に以下の工程が並ぶ。
工事全体の進捗を把握するための重要な資料である。

・造成
・杭打ち
・架台組立て
・パネル設置
・電気工事
・試運転
・完工検査
・連系

【EPC|MEMO】
EPCとは、
・Engineering(設計)
・Procurement(調達)
・Construction(施工)
を一括で請け負う方式のこと。

太陽光発電所では、
・発電所の設計
・機器の選定、調達
・施工管理および工事
までを一つの会社がまとめて担当する。

発電事業者にとっては窓口が一本化され、工程管理や責任の所在が明確になるというメリットがある。

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