第4話|ひとりの時間(専門版)

連載小説2026.02.25

アパートから車で一時間ほど。
山あいを抜けた先にサンエナジーが保有する太陽光発電所がある。

俺はこの発電所の電気主任技術者として専任されている。
発電量の確認、設備の点検、異常の確認。
そして、今日は月に一度の定期点検にあわせて草刈りを行っている。

発電所の管理において草刈りは欠かせない作業だ。
草が伸びれば、パネルに影がかかり発電量が落ちる。
草刈りを怠ると火災が起きることもある。

夏の草刈りは正直きつい。
日差しが強く、汗が止まらない。
だが、この時期はちょうどいい。

草刈りは嫌いじゃない。
誰とも話さなくていい。

仮払い機の音が一定のリズムで響く。
黙々と手を動かしていると頭の中が空っぽになっていく。
目の前にあるのは太陽の光と機械音だけだ。

一息をつき、仮払い機を止めると、急に周囲が静かになる。
遠くで鳥の鳴き声が聞こえる。風がパネルの下を抜けていく音。
ふと空を見上げた。

――汐里は、どんな顔をしているんだろう。

そんな考えがふと浮かぶ。

会ったことはない。web会議では、いつも画面はOFFだ。
声しか知らない。
明るい声。少し早口で言葉を選びながら話す。

顔も知らない相手を思い浮かべるなんて不思議だ。
だが、この場所では自然と浮かんでくる。
自分しかいない場所だからこそ。だからこそ、普段は気づかない感情が顔を出すのかもしれない。

俺は視線を戻し、再び仮払い機を手に取った。
考え事をするにはこの場所は静かすぎる。

草を刈る。ただそれだけでいい。

この発電所は今日も何事もなく電気をつくる。
それを守るのが俺の仕事だ。


【電気主任技術者|MEMO】
発電所、工場、ビルなどの電気設備の保安の管理を行う。
設備の点検、記録、異常時の対応などを保安規程に基づいて実施し、事故を未然に防ぐ役割を担う。
受変電設備の電圧により、電気主任技術者の専任が必要になる。

・専任
特定の受変電設備に対して電気主任技術者として専任される形態。自社の社員が専任する内部選任、他社の社員が専任する外部選任に分けられる。

・外部委託
保安法人や個人と契約し、保安管理業務を委託する制度。一定条件を満たすことで専任を免除される。

【草刈り|MEMO】
太陽光発電所ではパネル周囲に生える草を定期的に刈る必要がある。
草を放置すると発電量低下、設備不良、火災リスクの増加に加え、近隣住民の不安や苦情の原因にもなる。

第5話|サンエナジー(専門版)→

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